2017年5月30日火曜日

『楽天お買い物マラソン』という欲望の無限ループ地獄

『お買い物マラソン』という楽天の考えた人の物欲を幾何級数的に増幅させる仕組みを持つ狂気の競技に脱帽している。
よく知らない人のためにその仕組みをご説明しておくと、楽天お買い物マラソンとは、だいたい月に一度、4日〜7日程度の期間を設けて、その期間中に複数のショップで1000円以上(送料抜き)買い物をすればするほど、ポイントの倍率が上がっていくというものだ。
最大10店舗を完走すればポイントが10倍になる。
ようは全ての商品を10%引きで買える、というようなものだ。完走すれば。

月一回のこのセールをうまく利用すれば、とても得ができる!と考えるのは、非常に危険である。
その理由を今日はちょっとダラダラと述べてみようと思う。

必要な物リスト、欲しい物リスト、こういうものを作っておいて、無駄な物は一切買わずにその期間中にそのリストの物だけを一気に買えば、得じゃないかとは誰もが考える。
しかし人間の物欲というのは、そう算数のようには単純に割り切れないものがある。

節約とは何か、というと、ポイントや割引を活用して必要なものをできるだけ安く手にいれる、ということでは無いのではないか。
もっと大元の、物欲自体をそぎ落とさなければいけない。

例えば1万円を自由に使えるとしよう。
その1万円を使って、前から欲しかった定価1000円の物を10個手にいれるのと、同じく欲しかった定価1000円の物だが、半額になっているものを20個手にいれるのと、どっちがお得だろうか?
もちろん後者がお得だと感じるだろう。

しかし、20個もの物を買い物したことによって、その人の物欲の潜在意識の総量とでも呼ぶべき意識の量は、確実に膨らんでしまう。
人は、欲しい物を手に入れれば手にいれる程、だんだんと物欲が減っていくという生き物では無い。
手に入れれば手にいれる程、新しい物がもっと欲しくなる生き物である。
それに終わりは絶対に無い。

その正体は何かというと、癖とか習慣というものだ。
人間の脳はとかく習慣を好む。
必要だと思っている物は、本当に生活に必需なのではなくて、その人の習慣欲とでも呼ぶべき欲望を一時的に冷ますのに必要なだけのものであって、必要な物リスト、なんてものは、一切の無駄が無いというのは思い込みである。
そのリストにあるもののほとんどは、本当はもっと削れる物ばかりだ。
この依存性は、禁煙をする時やダイエットをする時に断ち切るのに苦労する習慣化した欲望とまったく同じ類の物である。

楽天は甚だ巧妙な手法でお得感を全面に打ち出して、人のその欲望の増幅作用を最大限まで利用して、客に買い物の無限ループ地獄を実現させている。
楽天側は確かに、その期間中大量のポイントを発行するわけで、これは一時的に見れば出費ではあろうが、その出費は新たな、より大きな客の潜在的物欲を買っているわけだ。
客からすればそんな潜在的な見えない意識などよりも、目の前にはっきりと表示される5倍だの10倍だのといったポイントにホクホク気分、むしろ楽天に感謝しているだろう。
実に上手いとしか言いようがない。
しかもこのポイントは、マラソン期間中に獲得できる数が10000ポイントまでと上限がある上に、期間限定ポイントなので、大抵一ヶ月以内にまた新たな買い物をするように強制的に仕向けられる。

先述の例えに戻って節約の理想形を考えるなら、1万円お小遣いがあったとした時にまず思い浮かぶのが「1万円で前から欲しかった物10個買える!」ではお金は貯まらない。
「半額セールだから20個買える!!」では先も申し上げた通り物欲の総量が増えるばかり。
「半分我慢して5000円は残そう・・・!」ならばお金は貯まるかもしれないがストレスも溜まる。
「1万円もあるけど欲しいものが1000円の物アレとアレくらいしか思いつかないから、8000円余るな」となるべきなのだ。
これが節約術の理想形である。

そのために何をすれば良いかというと、買い物する回数や量、種類など絶対値を減らすことだ。
そうすれば、欲望は尻すぼみで縮んでいって、減らした状態が当たり前となる。
その状態の中には、我慢が無いから努力もいらなくなる。

お買い物マラソンとは、その真逆の行為である。
ゆえに節約や節制にはならない。

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