ここでは国民健康保険についてまとめておこう。
社会保険と国民健康保険の大きな違い
二つの間には、保障内容などに細かい違いもあるが、最も大きな違いは”扶養できるかできないか”だ。
世帯に一人社会保険に加入している人が居れば、その世帯に妻が居て、子供がたくさん居ても、払う保険料は変わらないが、国民健康保険は世帯の人数に加算されるので、世帯の人数が多くなれば多くなるほど、負担が大きくなる性質がある。
ゆえに大家族を養う立場の自営業者などが、国民健康保険でやっていこうとなると非常に大変になることとなる。
逆に単身者などで所得が低い場合、国民健康保険が最も保険料を抑えられるケースも考えられる。
保障内容で最も手厚いのは?と考えるならば、職業や勤務先に依るところが大きいので一言で決め付けられないが、社会保険の、それも大企業の組合健保(組合管掌健康保険)が、高額療養費の上限額が一律2万円であったり、出産育児一時金を上乗せして給付したり、傷病手当金を日給85%で最長3年間給付するところもあることを考えると、最も手厚いと言えるだろう。
しかも大企業ほど、支払う保険料率は低い傾向にあるようだ。
一度ご自分の加入されている健康保険の内容をじっくり見返して吟味してみるのも良いかもしれない。
国民健康保険税の保険料は自治体によって大きく変わる
国民健康保険の保険料と一口で言っても、いくら払わなければいけないかは、自治体によって大きく異なる。
以前、住民税についてまとめた記事で、”もし税金を考慮して引っ越し先を考えるなら、考慮すべき項目は住民税よりも圧倒的に国民健康保険税である。”と書いたのはそういうことで、住民税の全国の自治体による違いなど、上と下でせいぜい年間2万円ほどの違いしか出てこないが、国民健康保険については、もっとも高い地域と低い地域で比べると、倍以上変わってくるのだ。
国民健康保険料高い自治体ランキングというサイトを参照するならば、最も高い保険料率を誇る広島県広島市と、最も安い保険料率を誇る静岡県富士市とでは、年収400万円の単身者と仮定して計算すると、なんと34万5015円も年間で納める保険料が違うという結果が出ている。
もしも全国どこでもアテなく引っ越し先を決めるとするならば、私なら広島市では無く、富士市を選ぶだろう。
国民健康保険税の保険料内訳
国民健康保険税には、『所得割』『均等割』『平等割』『資産割』という項目がある。
所得割…昨年の所得から導き出される基準値に、各自治体の定めた税率をかけて算出した金額。
均等割…世帯あたりの国保加入者の人数に応じて均等に負担する金額。
平等割…国保に加入する全世帯が平等に負担する金額。
資産割…国保加入者が固定資産を所有している場合、その年にかかった固定資産税にかかる金額。
さらにその4つの項目には、『医療分』『支援金分』『介護分』という区分がそれぞれ存在する。
医療分…医療給付費などに充てられる費用についての保険料。全ての被保険者が対象。
支援金分…後期高齢者医療制度の被保険者の医療給付費を支援するための保険料。全ての被保険者が対象。
介護分…介護保険の第2号被保険者としての保険料。40歳以上65歳未満が対象。
以上の4つの項目にあるそれぞれ3つの区分の合計額が、国民健康保険税として請求される。
このうち、平等割と資産割は、自治体によって加算されたりされなかったりする。
それぞれの項目の計算方法
【所得割の計算方法】
①総所得を計算する
給与所得控除額(平成29年分)国税庁サイト参照
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合には65万円 |
180万円以上360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円以上660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円以上1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1000万円以上 | 220万円 |
・公的年金等の所得=公的年金等の収入金額の合計額-公的年金等控除額
公的年金等控除額(平成17年分以後)『国民健康保険の免除』参照
受給者年齢 | (a)公的年金等の収入金額の合計額 | 公的年金等控除額 |
65歳未満 | 130万円未満 | 70万円 |
130万円以上410万円以下 | (a)×25%+37万5000円 | |
410万円以上770万円以下 | (a)×15%+78万5000円 | |
770万円以上 | (a)×5%+155万5000円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 120万円 |
330万円以上410万円以下 | (a)×25%+37万5000円 | |
410万円以上770万円以下 | (a)×15%+78万5000円 | |
770万円以上 | (a)×5%+155万5000円 |
・事業所得=事業収入-(必要経費+青色事業専従者給与or事業専従者控除+青色申告特別控除+繰越純損失)
②基準総所得額を計算する
世帯で2人以上収入がある者が居る場合、それぞれの総所得を計算した後、それぞれの基準総所得額を算出し、それらを足したものを”世帯の基準総所得”として次の所得割額の計算式に当てはめる。
1人が2つ以上の収入源がある場合でも、基礎控除額は33万円。
例:(夫の年金所得+夫の給与所得-33万円)+(妻の年金所得+妻の事業所得-33万円)=世帯の基準総所得
③所得割額を計算する
【均等割の計算方法】
均等割額=(自治体が定める医療分金額×世帯の加入者数)+(自治体が定める支援金分金額×世帯の加入者数)+(自治体が定める介護分金額×世帯の加入者数)
【平等割の計算方法】
平等割額=自治体が定める医療分金額+自治体が定める支援金分金額+自治体が定める介護分金額(世帯に40歳以上65歳未満の国保加入者が居る場合のみ加算)
【資産割の計算方法】
資産割額=(固定資産税額×医療分税率*1)+(固定資産税額×支援金分税率*1)+(固定資産税額×介護分税率*1)
*1.税率は各市町村によって違うので、お住まいの市役所等にお問い合わせください。
国民健康保険税の軽減条件と軽減率
(平成29年度)
7割軽減:世帯の総所得が33万円以下の場合
5割軽減:世帯の総所得が33万円+(27万円×被保険者数)以下の場合
2割軽減:世帯の総所得が33万円+(49万円×被保険者数)以下の場合
*世帯主が国民健康保険加入者で無い場合でも、世帯主に収入があればその収入は加算して審査される。
*事業所得において青色専従者控除や事業専従者控除は適用されない。
"保険料の軽減判定を行う基礎となる所得においては、青色事業専従者給与額は必要経費に算入することができないため、税法とは異なり、青色事業専従者給与額を含めず再計算した繰越損失額を用いる"岩国市役所HPより抜粋*譲渡所得においては特別控除前の譲渡所得で判定。
*公的年金受給者の年金所得は公的年金等特別控除(15万円)を控除した金額で判定。
*これらの条件・例外等は自治体によって異なる場合があります。
その他、会社都合により失業した時の措置としての失業軽減や、後期高齢者医療制度の創設に伴う条例減免などが受けられる場合があるので、お住まいの役所や国民健康保険納税通知書の案内でご確認ください。
国民健康保険税の軽減・減免申請方法
国民健康保険の軽減措置は、所得の申告をしっかりしておけば、毎年それに応じた請求が為されるため特に申請は必要無いが、自己都合によらない離職の場合や、災害などの特別事情に当たる場合などの減免措置を受ける場合は、手続きが必要ですので、役所にお問い合わせください。
”法人成り”による健康保険料の節税は有効かどうか。
個人事業主として国民健康保険に加入しているよりも、法人成りして、協会けんぽ等の社会保険に加入するほうが、実質健康保険料を抑えられるケースがある。
あるにはあるが、会社の利益の額によっては、法人税や厚生年金の負担などとの兼ね合いで、節税になるならないのラインがまちまちすぎて一概に言えない上、正確に会社の運営状況を予測して、精密に税額を試算するのが素人には困難である。
詳しい人が身近にいれば相談してみるのも良いかもしれない。
国民健康保険組合に加入できれば節税になるかも?
個人事業主のままで加入できる医療保険制度は、「国民健康保険」の他に「国民健康保険組合」があり、加入条件を満たすことができれば、組合員として、国保とは別の制度の中で保険料が算出されるので、組合の保険料によっては今のままよりも節税になるケースがある。
しかし、国民健康保険組合がある業種が限られていること、多くの組合は地域などが限定されていること、その職業で生計を立てていることの証明などが必要となってくるなどの関係上、加入すること自体が困難である。
また国民健康保険組合の保険料は、収入の高い低いにかかわらず定額である場合がほとんどであるようなので、現在国民健康保険料を高額支払っている人にしか、節税になる可能性は低そうである。
所得が300万円以上あるような人は真剣に考えてみても良いかもしれない。
節税についての所感
自営業者等が、国民健康保険の軽減措置を受ける場合については、とかく有効な方法が無いという感想である。
結局収入を極限まで抑えるとか、経費を使いまくるとか、手元にほとんどお金を残さないという荒技でしか、国民健康保険を最低値まで軽減させることは難しいようだ。
また、”各自治体の保険財政の良否によって料率等は変動があるのが一般的”などの書き込みも見られるように、その計算方法、軽減条件などは、自治体によって常に変動し、こうすれば確実にいくらいくらの節税になる、という答えが見つけられない。
国保加入者でない世帯主の所得も含めるとか(国保上の世帯主変更手続きにより、擬制世帯主の所得を含めず軽減判定が受けられる場合もあるが、その場合後期高齢者医療制度に関わる保険料の軽減は受けられない)、専従者給与は事業主の所得として算出するとか、この軽減判定の複雑さは、あらゆる市区町村のサイトで「国民健康保険税の軽減判定誤りについて」などといったお詫びページがヒットすることからも実感するところである。
特に気をつけたいのは、所得割を計算する上での控除には、青色専従者給与額、事業専従者控除額が含まれるが、軽減の判定ではこれを含まず審査されるという点だろう。
自分の奥さんに給料を80万円ほど支払った後の所得額が33万円以下だから、均等割も平等割も7割軽減されるだろうと考えていると、結果に落胆することになる。
ちなみに青色申告特別控除は、控除後の所得で軽減審査が行われる。
以上、ざっと国民健康保険について調べた内容をまとめてみた。
法改正や誤りや追加情報などあれば、随時加筆修正する予定である。
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