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ある”元”新聞配達員について
2017年4月27日木曜日

ボケが進行しているが体は元気な老人。その介護に追われる父母は、欝気味で不眠症。ありきたりの家族模様

これも実家でぼんやり考えていたことである。
私の親世代の会話で盛り上がる話題というと、病気の話、薬や健康食品の話、そして欝やボケ老人の介護に関する話である。
私のばあさんも、じいさんを亡くしてからすっかり元気を無くし、体の機能自体は元気なのだが、欝気味で、調子が悪い時などは錯乱状態というか、幻覚を感じたりしているような事を口にしたりするようだ。
亡くなっている人の名前を呼んだり、夢なのか現実なのか分からなくなったりしてしまう。

そういう人を間近に見ると思うのだが、人にはつくづく”役割”が必要なのだなと感じる。
人はただ”自由に”とか”気ままに”とか生きたいと願うものだが、しがらみというのは、人の心を地に繋げるというか、心の安定に大事なもののような気がする。
なーんにもしなくてよい、全て身の回りの世話をしてもらって、逆に自分が相手にしてやれることが何も無い、仕事が無い、役割が無い、という状態が、一番辛いのでは無いか。
ばあさんにとっては子供が自立して後は、じいさんを世話することが自分の役割であり、生き甲斐であり、生きる指標となるものだったであろう。
うちの母も同じである。
もし父が先に死んだら、急激にボケるだろうと予想される。
父は仕事をリタイアしてから一気に欝傾向になり、今でも不眠症などに悩んでいる。
あれほど自由の好きな遊び人で、週末になれば山に海にと飛び出していた人が、いざ今日から毎日休日ですとなると、とたんに何もする気力を失ってしまった。

人を生き生きとさせる要素というのは、案外思ったよりもずっとお堅いもの、たとえば”義務”とか”不自由”とか”しがらみ”とか”職務”とか”責任”とかいうものなのかもしれない。

仕事をしなくて良くなった父親、夫も子供も世話する必要の無くなった嫁、こういった人たちの上には、埋めようの無い空白がおりかかってくる。
ずっと楽になったはず、負担の減ったはずの体には、今までの数倍の疲労感、倦怠感が襲い掛かり、体が思ったように動かなくなる、眠れなくなる。
自信に裏打ちされた自我が、今まで確かに無意識に成立していたはずなのに、その感覚を思い出せない。

そういう状態に陥ってしまった人に、もう一度役目を与え、生き甲斐を再び感じてもらうことというのは、非常に難しい。
もう一度仕事をしろとも言えないし、世話する人間を囲い込めというわけにもいかない。
そういうもの以外の部分で、何かしらの小さなもので良い、ちょっとした制約とか、ちょっとしたストレスが伴うような、責任感や向上心を刺激されるような、仕事のようなルーティンに、熱意を感じれる何か、が見つかれば、あと20年はぴんぴん生きそうだと思うのだが・・・

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