筋がほぐれるような陽の光の中で、梅の花がもうすっかり開花した木もちらほら、木の下に行ってみると、「ブーン」という音波が重なっていくつも伝わってきて、微かに鼓膜を刺激したので、よく目を凝らして見上げてみると、蜂やアブよりはるかに小さな名前もわからない羽虫がたくさん、梅の花の手前で空中に見事に停止するようにホバリングして蜜に狙いを定めていたかと思うと、音も無くそっと花にとまってごそごそと中に入って行った。
今日は久しぶりに勢いの良い雨が降りしきっており、窓はスモークフィルムを貼ったように曇っている。
湿った温かさがあって、湿度というものを肌で感じれるようになると、春の予感も高まってくる。
かと思うと明日はカラッと晴れる代わりに最高気温は今日の半分、ここでは１０度前後までしか上がらないようで、まだまだ多くの虫やカエルなども、土から這い出してくるには早いといった感じである。
外を回る仕事をしていると、来る日も来る日も天気や季節というものを実によく感じる。
少しずつ少しずつ巡っていく季節を肌で実感できるこの仕事は、役得というか、ありがたい職種かもしれないなと思う。
惜しむらくは、どんなに微細な草花や虫たちの振る舞いに心が動いても、どんなに綺麗な夕日に恵まれても、どんなに心地よい風に吹かれる瞬間があっても、その時まさにその場で、今この瞬間のその感覚を、伝え共に味わう相手がいないことだ。
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