今はもう夜逃げしてしまったが、昔私の隣の部屋には、なんともどうしようもないおっさんが暮らしていた。
もう他にどこにも行き場所が無いというのが、一目見て分かるおっさんが、最後の頼みの綱として新聞配達をして生きていたという感じであった。
不思議だったは、1年ほど隣同士の部屋で生きていたのに、仕事の時以外に見かけた事がほとんど無かった。
トイレに行く姿も見た事が無かったのだ。
部屋からは物音一つせず、どこかに食べに行くことも散歩に出かけることもせず、部屋に篭って扉を固く閉ざしていた。
私はその扉の向こうにどんな世界が広がっているのか、見るのが恐ろしかった。
仕事中ちらしを新聞に折り込む作業をする数十分だけ顔を合わせるのだが、極稀に何かをしゃべったとしても、何と言っているのかはっきり聞き取れない上に、こちらの言葉も向こうに意味が伝わっているのか疑問で、つまり会話が成立しなかった。しゃべるというよりかは、独り言を相手にぶつけているというだけだったのかもしれない。
そんなおっさんがある朝刊配達の直後に、何か意味を成さない音を発しながら顔を真っ赤にして出て行った。
私は運良く、というか運悪く、というか、おっさんが出て行く瞬間に配達所の外ですれ違い、何故か出会いがしらに色々怒鳴られた。
その中で意味として理解できた音が一つだけあって、それは「逃げるんじゃないぞ」というような事だった。
その後そのおっさんは電車に乗って当ても無く彷徨ったのだろう。大阪のどこかで警察に補導されて、身寄りが無かったらしく、結局前職の責任者、所長の携帯に電話がかかってきた。
所長はそんな男の面倒は見れないと言って匙を投げた。
→不幸な男が去った後、不幸な部屋が残された後日談
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