何の話だという御仁は先にこちらをご覧ください。
→隣の部屋に暮らしていた本当の意味で何も持てなかった不幸な底辺男
→不幸な男が去った後、不幸な部屋が残された後日談
その中でも触れた事だが、うちの販売所の所長は60近いおばさんである。ついてきた職員であるおっさんも、何年この仕事をしているのか詳しくは知らないが、所長と同い年くらいだろう。
こんな年になってもやはりこういう事は絶えないのだろうが、このおっさんは、バツイチ子持ちの苦労とストレスで形作ったような所長であるこの肥満体の女性に、想いを寄せると表現するにはあまりに見るに耐えない欲望を腹に持っている。
見るに耐えない男と女の見るに耐えない恋愛事情であるが、本人たちにとっては深刻な問題だ。
であるから、所長と二人でこの部屋の掃除に来た時にも、口では「なんでこんなことせにゃならん」と言いながら、その声色は妙に弾んでいて、いつでもすぐ不機嫌に転がるダメ人間特有の不安定な精神の上にいい加減なご機嫌の表情を浮かべて、聞いているこちらが恥ずかしくなるように声のボリュームを高めていた。
初めはよかったのだが、最後の詰めが甘かった。
部屋がおおかた片付いた頃に私は自分の部屋に戻ってきて部屋でごろごろとしていたのだが、作業に目処がついて手がすいた所長が下の階でもう一人の職員のおっさんとおしゃべりを始めた。
これがいけなかった。
するとまだ部屋で残って作業をしていた所長に想いを寄せるおっさんは、その所長ともうひとりのおっさんの会話の声を聞きつけて、ジェラシーに燃え上がり「あのアマぁ!人が手伝ってやってんのにつけあがりやがって!!」と怒鳴りこんでいった。
その勢いたるや、嫁の不倫現場を押さえた旦那といった様相を呈しており、下の階からしばらく一方的な逆恨みの怒鳴りをぶつける声が聞こえてきていた。
所長は前々から何か有るたびにこのおっさんからの一方的な気持ちを浴びながら、いまさら自分の店の職員相手にまさか、うざいからといって首を切るわけにもいかず、またどんな職員であろうと居なくなれば立ち行かなくなる状態の販売所を抱えて、どうすることもできずにうやむやにたしなめる他無いようだ。
そうやってこのボロボロの販売所と、ボロボロのおっさんたちと、ボロボロの自分の生活を、ギリギリのところで繋ぎとめて日めくりカレンダーを、ビリビリとめくって生きていた。
私はえらい販売所に長い間勤めてるものだと、まるで他人事のようにそれらをBGMにしながら、自分は今後も5年10年とここに居るのだろうかと想像しかけて、あまりに面白くない想像であったから深く考えることを避けてとにかく飯を食って寝たのであった。
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